今回はBIツールの代表的なアプリケーション「QlikView」と「Tableau」について、そしておまけ程度ですが「Power BI」についても少しふれながら比較をしてみたいと思います。
※最新の情報については、オフィシャルサイトや各ベンダーの公式のアナウンスをご参照ください。
目次
「BIツールとは?」
BIツールとは、BI=ビジネス・インテリジェンスと呼ばれ、大量のデータを処理し、グラフまでの視覚化を容易にできるように設計されたアプリケーションです。
統計解析などを目的とした専門的なアプリケーションとなるため、少し前まではサーバーシステムも必須の上、何百万から何千万円という導入費用のため、手軽に扱えるものではありませんでした。
しかし最近注目を集めている「QlikView」、「Tableau」、「Power BI」は価格設定も低く、中小企業や個人でも扱うことのできるアプリケーションとなっています。
「何ができる?」
先に上げた3つのアプリケーション、それぞれに特徴はありますが共通しているのはExcelやACCESSといった普段使っているフォーマットのデータを取り込んでから、データの統合、そしてグラフを描くまで簡単に行うことができます。
特に今回取り上げた3つのBIツールは「インメモリ」という技術を用いていており、大量のデータ処理スピードが驚くほど向上しています。
通常パソコンではハードディスク上でデータを処理しますが、インメモリ技術では、データをメモリ上に格納して処理をします。
単純な物理的換算ですが、処理速度にして数万分の1の短縮となります。
またデータの視覚化も目的としていますので、データの抽出から統合、そしてグラフ描写までのプロセスが明快で、大量のデータを扱うのに最適なアプリケーションとなっています。
「特徴」
ではそれぞれの特徴を見ていきましょう。
「QlikView」
「QlikView」は1993年にスウェーデンで創業したLund社の技術を元に、アメリカのQlikTech社が開発しています。
日本法人はクリックテック・ジャパン株式会社、国内のベンダーは株式会社アシスト、株式会社大塚商会、日立INSソフトウェア株式会社、ソフトバンク・テクノロジー株式会社など数社あるようです。
UIはなんだかなじみのある雰囲気で、データの取り込みもガイドに従って簡単に行えます。
複数のデータファイルを取り込む場合は、簡単なコーディングで取り込めるので慣れてしまえばこちらの方が便利そうです。
またデータを取り込んでからのグラフ描写までのプロセスも数回のステップで可能となっており、関数ベースでデータを抽出・統合していきます。
関数といっても、取り出したい項目を選んで加工条件となる関数を選択するだけです。
ちなみに設定可能な範囲は幅広く、初めは戸惑うことがあるかも知れません。
自分は国内のベンダーがWEBに公開しているハウツーを見ながら、簡単なグラフ描写まで数時間かかりました。
それでも一度覚えてしまえば、複数データを使ったグラフも簡単に描くことができました。
さらに「連想技術」という独自のデータ処理を行っているため、事前の定義に限らずデータの追加や統合が容易に行え、解析をしながら抽出するデータを変更するといったことも可能にしています。
この「連想技術」を簡単に説明すると、データというのは通常「表」形式で重複した状態にあります。
連想技術では同じ項目に対してデータは一つしか結びつけません。
そうすることでデータ量を圧縮すると同時に、データの結びつきをたどることで複雑な関連付けも可能にしています。
ちなみに人が連想するプロセスと同様の技術ということから「連想技術」と呼ばれているそうです。
「Tableau」
「Tableau」は2003年にアメリカで設立されたTableau Software社の開発したアプリケーションです。
日本法人はTableau Japan株式会社。国内のベンダーは伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式など数社あります。
新しいメーカーだけあって、UIは洗練された雰囲気になっています。
インストール後30分で利用可能と言われるだけあって、データの取り込みもファイルを指定するだけでOK。
画面上には設定する項目が視覚的に分かりやすく表示されていて、グラフ描写までクリック&ドラッグで簡単に行えます。
この直感的なUIが最大の特徴となっていて、グラフの描写はもちろん配置からドキュメントのデザインまで一気に行うことができます。
アプリケーションを立ち上げてからプレゼン資料を作るまで、正直ExcelやPower Pointを使うより簡単だと思いました。
グラフの表現方法も多彩で、かつデフォルトのデザインも非常に完成度が高くなっています。
今まで大量のデータを資料にしていた苦労がウソのようです。。。
ちなみに開発元のTableau Software社のフィロソフィーは「データをデザインする」。
創業者の一人がピクサーの設立者ということもあって、グラフィカルなポイントが特に高いと感じました。
データ分析がはじめてという人でも、簡単に扱うことができるアプリケーションだと思います。
「Power BI」
「Power BI」はビジネスシーンに圧倒的なシェアを誇る、マイクロソフトが開発したBIツールです。
内容はExcel2013をベースに、ビックデータの処理から視覚化まで行うアドインと、Office 365を通じてクラウド管理が行えるサービスとなっています。
なんといっても誰もが使い慣れたExcel上で、大量のデータを扱え、かつグラフ描写まで行えるのが魅力でしょうか。
機能に応じてそれぞれ名称が変わってきます。
「Power Query」→ データベースやWEB上のクエリをエクセルで接続可能にします。
「Power Pivot」→ インメモリでデータを統合。視覚的にも表現されるので、複数データの「つながり」修正・更新が可能です。
「Power View」→ エクセル上でグラフ描写といった、データの視覚化に使用します。
「使ってみて」
レビューには、普段扱っている複数サイトのアクセス解析データを使用しました。
「QlikView」
正直慣れるまでに時間はかかるかも知れません。
基本的には関数を利用しなければならず、またデータの取り込み時にフィルタリングをしようと思うとコーディングも必要になります。
逆に言えば、関数とコーディングでなんでもできてしまうので、データを多面的に見るには優れたアプリケーションだと思います。
複数のデータベースの結合も覚えてしまえば簡単ですし、データを見ながらその場のアイデアで抽出したデータを加工、別の側面から改めて見ていくといったことも可能です。
「Tableau」
本当に簡単にグラフ描写まで行え、ユーザビリティはダントツ高いと感じました。
データを専門的に扱わない人でも気軽にデータを利用できるので、仕事の仕方も大きく変わるんじゃないかと感じました。
エクセルでは描写が難しかったグラフも簡単に描けるし、ブラウザでも見ることができる(クラウド利用のライセンスが必要)ので、そのままプレゼン資料としてクライアントに提案もできます。
操作も簡単で、抽出項目を簡単に変えながらグラフをグリグリ動かすのは、見ているだけでも面白くて仕事を忘れてしまいました。
ただし、複数データの統合は「QlikView」ほど柔軟ではないため、場合によっては事前にどんなデータを使用するか考える必要があると思います。
「Power BI」
こちらは残念ながら利用できる環境になかったので紹介だけとなりますが、ビジネス標準であるがExcelベースとなっているのは、仕事上では大きな魅力だと思います。
「QlikView」「Tableau」の使用と閲覧にはライセンスが必要となるので、コスト面を考えると「Power BI」も捨てがたいところだと思います。
「費用」
では気になる導入費用について。
どんなに良いアプリケーションでも、仕事で使う以上考えなければならないのがコスト。
それぞれ見比べてみたいと思います。
「QlikView」
スタンドアロン版は無料
1サーバーライセンス(5ユーザー)¥2,500,000~(おおよそ)
「Tableau」
デスクトップ版1ライセンス(1ユーザー)¥200,000~(おおよそ)
「Power BI」
1ライセンス5ユーザー \4,450/月間
「QlikView」は使いこなすまでに時間もかかると思いますので、スタンドアロン版が無料というのは導入への大きなきかっけとなるんではないでしょうか。
「Tableau」はクラウドで利用できる複数ユーザーライセンスも設定されているので、タブレットでのプレゼン利用といった、幅広い活用が想像できます。
いずれも新たに導入した場合の最低価格となります。
なお「QlikView」と「Tableau」の詳細な価格については、ベンダーから提供されている情報をご確認ください。
また「Power BI」については、Excel2013やOffice365を導入済みであれば、費用はもっと抑えることができます。
「まとめ」
「Tableau」は価格的にも導入のハードルは低く、また幅広いユーザーが使えるアプリケーションと感じました。
「QlikView」は使えば使うほどデータを多面的に見ることができる、より専門的なアプリケーションと言えるかもしれません。
スタンドアロンであれば無料というのもポイントだと思います。
「Power BI」は最近多くなってきた月額性なので、利用したいユーザーが利用したい期間だけ使えるということと、何よりOffice環境ということも導入のしやすさにあると思います。
いずれもペタバイト級のビックデータも難なく使える処理能力もあり、膨大な顧客データや、ウェブサイトのアクセスデータの利用も全く心配なさそうです。
CSVやExcelに落とし込めるデータなら扱えるので、POSや会計といった売り上げデータとも相性はよさそうです。
こうして扱いやすいアプリケーションが増えることで、組織規模の大小に関わらずデータ利用の仕方というものが、これからどんどん変わってくるのではないでしょうか。
以上簡単なレビューでしたが、みなさまの仕事のアイデアにつながれば幸いです。
機能 | QlikView | Tableau | Power BI |
---|---|---|---|
インメモリ技術 | 高速インメモリ | インメモリ | Power Pivot内で動作 |
地図描写 | GeoQlikとの連携で描写可能 | 描写可能 | Power Mapの利用で可能 |
統計解析機能 | 簡易アルゴリズム搭載 | 「R」との連携で可能 | 関数とマクロの利用で可能 |
非構造化データ | Cloudera上でHadoopから取り込んで連携可能 | Hadoopから取り込んで連携可能 | Hadoopから取り込んでPower Query上で連携可能 |
クラウドサーバ | パートナー企業が提供 | 自社運用 | SQL Server の利用で可能 |
使用環境 | クライアントソフト、ウェブブラウザ | クライアントソフト、ウェブブラウザ | Excel 2013とSharePoint Online planに加入、もしくはOffice365 Enterpriseが必須 |
モバイル使用環境 | ウェブブラウザ | ウェブブラウザ | 利用可能(Office365上) |
ライセンスバージョン | Client:ビジュアル作成 Server:ビジュアル資料のWEB上での閲覧、管理、更新 |
Desktop:データの加工、ビジュアル化保存ドキュメントは他バージョンでも閲覧可能 Serever:ビジュアル化したドキュメントのWEB上での閲覧、管理、更新が可能 |
Office 環境によって複数バージョンあり |
動作環境 | 64bit Core2 Duo、メモリ2G、ハードディスク300MB | Pentium 4(2001年リリース)かAMD Optron(2003年リリース)プロセッサが搭載れている環境が必要 | メモリ:32 ビットでは 1 GB の RAM、64 ビットでは 2 GB の RAM、ハードディスク:3.0 GB の空きディスク領域、OS:Windows 7以降 |
DB | 必要ないが、DB、データーウエアハウスも利用可能 | 必要ないが、DB、データーウエアハウスも利用可能 | SQL Server |
価格 | スタンドアロン版は無料 1サーバーライセンス(5ユーザー)¥2,500,000~ |
デスクトップ版1ライセンス 1ユーザー¥200,000~ | 1ライセンス5ユーザー \4,450/月間(Office365 Pro ユーザー\3,290/月間) |